遺言・相続のご相談は、立川・昭島・八王子・福生を中心に、多摩地域の皆様にご奉仕する燦リーガル司法書士行政書士事務所へ。随時相談受付中です。

遺言・相続

相続手続の流れ

相続開始後には、通夜、葬儀、法要、お香典返し、納骨、挨拶状作成など大切な仕事がたくさんあります。
それらをひとつひとつこなすだけでも相当の気遣いと時間を費やすものですが、同時に相続手続きもしっかりとしていかなくてはいけません。
相続手続には、各種さまざまな申請が必要になりますので、しっかりと把握することが何よりも重要です。

相続の流れ・注意点
死亡(相続開始)
葬儀の準備・死亡届の提出
死亡届は7日以内に提出
葬 儀
初七日法要
遺言書の有無の確認
遺言書は家庭裁判所の検認 ※公正証書遺言は除く
四九日法要
相続人・相続財産・債務の概略調査
債務が多い場合、相続放棄・限定承認の検討
相続放棄・限定承認 申立期限(3ヶ月以内)
相続人の確認
家庭裁判所へ申立
所得税の申告と納付(準確定申告)(4ヶ月以内)
相続財産・債務の調査
相続財産の評価
相続財産目録の作成
遺産分割協議(49日をめどに始める)
遺産分割を協議
財産、債務の配分を協議
納税の方法、延納・物納の検討
相続人全員の実印と印鑑証明
相続税の納付(10ヶ月以内)税務署に申告・納税
遺産の名義変更手続不動産の相続登記、預金・株式等の名義変更など

相続手続の専門家とは

相続手続きのサポートを行える専門家(国家資格者)について説明したいと思います。
どの国家資格者が、どんなサービスやサポートをしてくれるのか、ご存知ではない方も多いのではないでしょうか?
各国家資格者の強みと、その仕事を下記にまとめましたのでご参考ください。

国家資格一覧表
国家資格主要担当機関主要業務・強み
司法書士法務局 不動産(土地・建物)の登記・名義変更
法務局への登記代行
相続放棄等裁判所への申立の書類作成
弁護士裁判所 紛争やトラブルの調停・解決
裁判所への申立代行
裁判所での口頭弁論サポート
税理士税務署 税務全般のサポート
税務署への申告代行

最初の手続き

死亡届を提出する

死亡後7日以内に医師の死亡診断書を添付して、該当する市区町村の長に提出します。
死亡した日または死亡したことを知った日から7日以内に市区町村役場に「死亡届」を提出しなければなりません。
(死亡届を提出しないと死体火葬許可証が発行されません)

通常、死亡診断書と死亡届は一緒になっていますので、病院で死亡診断書を作成してもらいましょう。
(生命保険金等を受け取る際にも死亡診断書が必要です)

死亡届が提出されると、戸籍に死亡の記事が記載され、住民票の記載も消除されます。
※死亡届は、「死亡者の本籍地/死亡地/届出人の住所地/届け人の所在地」の、いずれかの市町村役場に届出てください。

埋火葬するには、「埋・火葬許可証」が必要です。死亡届の手続きが終了すると許可が出るので、早めに死亡届を提出しましょう。

必要書類

期限のある手続き

相続発生後、一定期限までに様々な行政上の手続をする必要があります。
ここでは、相続が発生した後、期限内に処理すべき手続きを解説したいと思います。

死亡届、相続方法、所得税の準確定申告、相続税の申告などの主な手続きを見てみましょう。

7日以内にやらなければならないこと
死亡届の提出
死亡後7日以内に医師の死亡診断書を添付して、該当する市区町村の長に提出します。
3ヶ月以内にやらなければならないこと
相続放棄の申し出
相続人が、被相続人の財産及び債務を一切受け入れないことを「相続放棄」といいます。
例えば、被相続人のマイナス財産がプラス財産よりも多い場合、「相続放棄」をすることによって負担を免れることができます。
相続放棄は家庭裁判所に申し出ることが必要です。
限定承認の申し出
被相続人の財産をすべて無限に承継することを「単純承認」といい、これに対し、プラス財産の範囲内でマイナス財産を承継することを「限定承認」といいます。
借金の額がその時点で把握できない場合に使います。これも家庭裁判所に申し出ることが必要です。
4ヶ月以内にやらなければならないこと
所得税準確定申告
不動産所得や事業所得など所得税の確定申告が必要な人は通常、翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告を行いますが、死亡した場合には、その年の1月1日から死亡日までの期間の所得を確定申告(準確定申告といいます)をしなければなりません。一年の途中で区切りをつけるということです。所轄の税務署に申告します。
この申告は相続人全員が納税者となり、被相続人の所得税の申告を行う義務があります。
10ヶ月以内にやらなければならないこと
相続税の申告
被相続人の遺産に対して相続税がかかる場合には、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告が必要な方は相続税の申告をしなければなりません。
相続税の納付
相続税を現金納付する場合は10ヶ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法である、延納(国に借金すること)や物納(物で納めること)も申告期限(10ヶ月)までに申請書を提出し、許可を受けなければなりません。
1年以内にやらなければならないこと
遺留分の減殺請求
民法では、法定相続人が必ず相続できるとされている最低限の相続分(=遺留分)が保証されています。
万一、遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかったときには、遺留分を侵した相手に対して相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に「遺留分の減殺(げんさい)請求」を行うことで、これを取り戻すことができます。
3年10ヵ月以内にやらなければいけないこと
相続税の特例適用のための分割期限
相続税の軽減特例である「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」「特定事業用資産の特例」の適用は、遺産分割協議が整っていることが適用要件となっているため、申告期限(10ヶ月)までに協議が整っていない場合には、適用しない内容での申告となりますが、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出して おき、相続税の申告期限から、特例の適用を受けることができます。
3年以内に協議が整えば、相続財産を譲渡した場合の所得税の譲渡の特例(取得費加算)は、その譲渡が相続税の申告期限の翌日から3年以内に行われたときだけに限られています。

以上、期限のある手続きについてお話ししましたが、この全てを行うわけではありません。
ただし、知らなかったでは済まされないのが、この期限のある手続きです!

もしも、日程が迫っていても時間の調整がつかないという方がいましたら、すぐにお問い合わせください。

相続手続きのチェック表

手続きは、下記の一覧からご確認ください。

届出・手続き説    明期 限手続き先
死亡届「死亡診断書」とセットで提出7日以内亡くなった人の本籍地または届出
人の住所地の市町村役場
死体火(埋)葬許可申請書火葬・埋葬の許可をとるとき7日以内
世帯主変更届世帯主が死亡したとき14日以内住所地の市区町村役場
児童扶養手当認定請求書世帯主が死亡して、母子家庭になったとき世帯主変更届と同時住所地または本籍地の
市区町村役場
復氏届配偶者の死亡後、旧姓に戻りたいとき必要に応じて住所地または本籍地の
市区町村役場
姻族関係終了届配偶者の死亡後、
配偶者の親族と縁を切りたいとき
必要に応じて住所地または本籍地の
市区町村役場
子の氏変更許可申請書配偶者の死亡後、
子の姓と戸籍を変えたいとき
必要に応じて子の住所地の家庭裁判所
改葬許可申立書お墓を移転したいとき必要に応じて旧墓地の住所地の市区町村役場
相続放棄、
限定承認の申立
債務を相続したくないとき3ヶ月以内亡くなった人の住所地の
家庭裁判所
準確定申告1月1日から死亡日までの所得を申告する4ヶ月以内亡くなった人の住所地の税務署
運転免許証返却速やかに最寄の警察署
国民健康保険証変更事項の書き換えをする速やかに住所地の市区町村役場
シルバーパス返却速やかに住所地の市区町村役場
高齢者福祉サービス利用登録の廃止速やかに住所地の福祉事務所
身体障害者手帳・
愛の手帳など
返却(無料乗車券などがあれば一緒に返却)速やかに住所地の福祉事務所
相続税の申告相続税を支払う場合10ヶ月以内亡くなった人の住所地の税務署
相続登記不動産の名義変更期限無し不動産の管轄の法務局
遺留分減殺請求遺留分を侵害された場合原則、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から、1年間相続人から受贈者へ

勤務先(在職中の場合)

届出・手続き説    明期 限手続き先
死亡退職届提出速やかに勤務先(手続きは勤務先で行う)
身分証明書返却速やかに勤務先(手続きは勤務先で行う)
退職金受け取る速やかに勤務先(手続きは勤務先で行う)
最終給与未支給分があれば受け取る速やかに勤務先(手続きは勤務先で行う)
健康保険証返却速やかに勤務先(手続きは勤務先で行う)

遺産相続の種類

相続するべき?しないべき?私は相続人?

相続には、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3種類があります。

限定承認と相続放棄 ※自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内の決断が必要です。
相続チャート
  • 無条件で全財産と全借金を相続する
  • 相続財産を超えた借金は負担しない
  • 相続人でなかったとみなされる
単純承認・相続放棄をする前の準備

住宅ローンは「団体信用保険」が掛けられている場合には一般的に債務免除となります。ローンを組んだ銀行等に確認してください。どうみても債務が多い場合は相続放棄の申立をしましょう。

借金は後から判明することも多いので注意してください

親に借金や債務保証が残っていそうな場合のチェックポイント
借用書や、金融機関から送られてきた残高の通知書などを探す
保証人になっていそうな取引先・金融機関、親が親しかった人に、借金があるか確認する

遺産相続の種類

相続人調査は、正式には戸籍謄本の収集と相続関係説明図の作成を通じて行います。おそらく、相続に直面した多くの方が一番始めにとまどってしまうのが、相続人調査であると思います。『親から子供へ』といった簡単な戸籍であればまだしも、相続においては複雑な戸籍を読み解いて相続関係を明確にし、そのうえで、銀行の預金や土地・建物の名義変更の申請を進めなくてはならない場合が多いからです。

そして、財産調査について、最近では下記のような困りごとも少なくありません。

「被相続人とあまり面識が無かったので、相続財産がどれくらいあるのか分からない・・・」
「兄弟で仲が悪く、亡くなった両親と同居していた方が預金通帳を握っていて相続財産がどれくらいあるのか分からない・・・」
「相続人のひとりが、法要等の費用を理由に相続手続きを仕切ってしまい、どんな状況なのか、どれくらい財産があるのか分からない・・・」

こんな場合は、弁護士、司法書士、税理士等の相続手続きのプロにご相談ください。
どの専門家に依頼するかは、それぞれ事案や予算に応じて選択すると良いと思います。

どこに相談して良いかわからない、そんな方は当事務所へご連絡下さい。
まずは内容をお聞きした上で、当事務所で対応できない事案の場合は、弁護士、税理士をご紹介致します。

法定相続人について

誰が相続人となるのか

法律で定められた相続人のことを「法定相続人」といいます。
では、法定相続人はどのような規定で決まるのでしょうか?
誰が法定相続人になるかは民法の規定により確定します。
民法では配偶者および被相続人との血縁の深い者を優先的に法定相続人とするように規定しています。
具体的には一定の法則があり以下のようにして法定相続人を確定していきます。

妻または夫(=配偶者)常に法定相続人となります
第1順位 子配偶者とともに常に法定相続人となります
第2順位 父母被相続人に子がいなかった場合に配偶者とともに法定相続人となります。
第3順位 兄弟姉妹被相続人に子も父母もいなかった場合に配偶者とともに法定相続人となります。
例1  被相続人に(=配偶者)とがおり、父母がいる場合
配偶者は常に法定相続人となります。父母は子がいるので法定相続人となりません。
例2  被相続人にはいるが子はおらず、がいる場合
配偶者は常に法定相続人となります。被相続人に子がいなかった場合なのでのが法定相続人になります。なお、は父母がいるので法定相続人となりません。
例3  被相続人にはいるが子はおらず、父母がいないががいる場合
配偶者は常に法定相続人となりますので法定相続人です。被相続人に子も父母もいないのでが法定相続人になります。
例4  被相続人に妻、子はおらず、がいる場合
被相続人に子・妻・母・いなかった場合なのでが法定相続人です。は父がいるので法定相続人となりません。
少し特殊なケース
※被相続人に子はいるが養子である場合
養子は子と同じように扱われますので常に法定相続人になります。

※被相続人の妻が妊娠中である場合
民法では妻が妊娠中である場合に、生まれてくる子の権利を保護するために胎児を既に生まれた子と同じように扱っています。よって常に法定相続人になります。
代襲相続(孫、甥の場合)について
被相続人に子がいたが被相続人より先に亡くなっていた場合、その子の子(つまり孫)が相続人となります。これを代襲相続といい、孫を代襲相続人といいます。孫が代襲相続人の場合は子と同じように扱われますので常に法定相続人となります。
また、兄弟姉妹が法定相続人であったが被相続人より先に亡くなっていた場合にも、その兄弟姉妹の子(つまり甥)が代襲相続人となります。甥は兄弟姉妹と同じように扱われますので被相続人に子も父母もいなかった場合には配偶者とともに法定相続人となります。

法定相続人としての資格を失う場合

民法は法定相続人となる者を定めていますが、その資格を失う場合も定めています。その制度には欠格と廃除の2つがあります。
欠格
相続の争いに関して被相続人を殺そうとしたり、遺言書を偽造したというような、社会的に相続人としてふさわしくない行動をとった場合には自動的に相続人としての資格を失います。これを欠格といいます。
廃除
相続欠格ほど犯罪性はないものの、被相続人が虐待や侮辱を受けたりした場合、生前は被相続人が遺言で廃除する意思表示をした時は、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、家庭裁判所に申し立てることにより、相続人としての資格を失わせることができます。これを廃除といいます。

相続税・相続財産とは

相続の手続きとして最も重要なことは、相続税がかかる財産を把握することです。
相続税の対象となる財産は大きく、「1..本来の相続財産」、「2.生前の贈与財産」、「3.みなし相続財産」の3つに分類されます。

本来の相続財産
相続人による遺産分割の対象となる財産のことです。
生前の贈与財産
相続により財産を取得した者が、相続の開始日から3年以内に取得した被相続人からの贈与財産及び相続時精算課税の適用を受けた財産のことです。これらの財産はすでに被相続人の所有から外れていますが、相続税の計算上は本来の相続財産に上乗せします。
みなし相続財産
本来的に被相続人の財産ではないが、相続税の計算上はこれを相続財産とみなして、本来の相続財産に上乗せする財産のことです。死亡保険金、死亡退職金などがこの分類に属します。

燦リーガル司法書士行政書士事務所では相続税に関するご相談は専門家の税理士さんをご紹介します。

相続財産にはどんなものがあるか教えて下さい
プラスに作用するもの
土地・建物   借地権・貸宅地   現金・預貯金・有価証券(小切手・株券・国債・社債ほか)
生命保険金・退職手当金・生命保険契約に関する権利   貸付金・売掛金   特許権・著作権
貴金属・宝石・自転車・家具   ゴルフ会員権   書画・骨董   自社株など
マイナスに作用するもの
借入金・買掛金   未払の所得税・固定資産税・住民税等の公租公課   預かり敷金・保証金   未払の医療費
非課税財産
お墓・永代供養代金・香典・国などに寄付した財産   生命保険金・退職手当金のうち一定額

みなし相続財産とは?

「みなし相続財産」とは、相続税の手続きにおいては被相続人の財産ではないにも関わらず相続財産として相続税の課税対象となる財産のことです。
被相続人の死亡を原因として相続人に支払われる生命保険金や損害保険金などは、被相続人が生前から持っていた財産ではありませんので、民法上は相続財産として「遺産分割協議」の対象にはなりません。しかし、被相続人が保険料を負担していた契約については、相続税の計算をするときは、相続財産とみなされて相続財産に含めなければなりません。
被相続人の死亡を原因として支払われる退職手当金も同様に「みなし相続財産」となります。

みなし財産

被相続人が死亡する前の
3年間で贈与された財産
被相続人が死亡する直前に相続人に財産を贈与して節税しようとする行為を防止するための規定です。
その節税行為を防ぐために、被相続人が死亡する3年以内に贈与された財産は相続財産(みなし相続財産)として扱われ、相続税の課税対象になります。
生命保険金 被相続人が死亡する直前に相続人を受取人に変更して相続税を節税しようとする行為を防止するための規定です。その節税行為を防ぐために、受取人が誰であっても被相続人が掛けていた生命保険は相続財産(みなし相続財産)として扱われ相続税の課税の対象となります。
死亡退職金 被相続人が受取人である場合の死亡退職金は被相続人の財産になりますので、当然通常の相続財産になります。しかし、被相続人が個人事業などを営んでいた場合に、被相続人が死亡する直前に相続人を受取人に変更して相続税を節税しようとする行為を防止するための規定になります。その節税行為を防ぐために、受取人が誰であっても被相続人の死亡退職金は相続財産(みなし相続財産)として扱われ、相続税の課税対象になります。
弔慰金 もともと弔慰金は非課税なのですが、非課税であることを利用して多額の弔慰金、葬儀料などが支払われるといった節税行為を防止するための規定です。その節税行為を防ぐために、相続人に対して支払われた多額な弔慰金、葬儀料などは相続財産(みなし相続財産)として扱われ、相続税の課税対象になります。

燦リーガル司法書士行政書士事務所では相続税に関するご相談は専門家の税理士さんをご紹介します。

遺産分割協議(遺産分割の方法)

遺言により、各相続人の取得する財産が具体的に記されている場合を除いて、遺産分割協議により「①誰が、②どの財産を、③どの方法で、④どれだけ取得するか」について相続人全員で協議し、財産を分けることになります。
遺産分割協議は、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と民法で定められています。

遺産分割協議に相続人全員が参加していなかった場合は、その遺産分割協議は無効となってしまいます。また、相続人が遺言で包括遺贈しているような場合は、包括受遺者も相続人と同様の地位とされますので、包括受遺者は協議に参加する必要があります。

遺産分割の種類
現物分割
一般的な方法で、遺産そのものを現物で分ける方法です。現物分割は、各相続人の相続相当分通りに分けることは困難なので、相続人間の取得格差が大きい場合には、その分を他の相続人に金銭で支払うなどして調整することになります(代償分割)
代償分割
遺言の分割に当たって共同相続人などのうちの1人又は数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が、他の共同相続人等に対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる方法です。
換価分割
遺産を売却して金銭に変換した上で、その金額を分ける方法です。現物を分割してしまうと価値が低下する場合などはこの方法がとられます。この方法は、遺産を処分してしまうので、処分に要する費用や譲渡所得税などが、かかることがあるので注意が必要です。


遺産分割協議はあくまで、相続人間での任意の話し合いです。遺産分割協議をして法定相続分と違う分け方にすることもできます。また、遺言書があっても受遺者はそれを放棄し、遺産分割協議で配分割合を決定することもできます。
つまり、相続人全員で協議し、全員が賛成すれば遺言や法定相続分に関係なく、財産をどのように分けても自由なのです。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書作成の注意点

遺産分割協議書は後に争いにならないように作成するものですから、記述内容は正確に記入しなければなりません。
遺産分割の協議が成立したとき必ずしも作成する必要はありませんが(不動産の名義変更があるときは原則必要)、協議書を作成しておくと遺産分割協議の合意が相続人間できちんと成立したことを証明する有力な資料になります。

遺産分割協議書についての、作成のルールは特にありません。
縦書きでも横書きでもかまいません。
タイトルは「遺産分割協議書」「合意書」等どんな名称でもかまいません。
誰の相続なのか被相続人の氏名、最後の住所、死亡年月日などで特定しますので、相続人の住所は住民票に記載されたとおりに書きます。
相続人全員の、印鑑登録された実印の押印が必要です。遺産分割協議書には印鑑証明書を添付するのが通例です。
遺産分割協議書を作成する場合にはその合意の内容を具体的かつ正確に記載し、その真正を担保するために、当事者がそれぞれ署名または記名し、印鑑登録をした実印で押印します。
協議書が2枚以上になる場合、それが1つの書面でありかつ、その順序で綴られたものであることを証明し、あとから、抜き差しできないように、両ページにまたがって契印を押します。
遺産分割協議書は相続人の人数分作成するかまたは相続人の代表者が原本を保管し他の相続人はそのコピーを保管します。

遺産分割協議書記載例
遺産分割協議書
<被相続人の表示>
本籍  兵庫県○○○
最後の住所 兵庫県○○○
被相続人氏名 ●●●●
相続開始の日 年 月 日

<相続人の表示>
後記相続人署名欄記載のとおり

平成 年 月 日●●●●の死亡により共同相続人○○ ○○、△△△△、はつぎのとおり被相続人●●●●の遺産を相続した
1.相続人 ○○ ○○は次の遺産を取得する
(1)北海道○○
宅地   210㎡
(2)同所同番地 家屋番号9番
木造瓦葺2階建  居宅  床面積 130㎡
(3)上記居宅内にある家財一式
(4)有価証券
○○株式会社の株式2000株
(5)預金債権
○○銀行西宮支店  普通預金  口座番号

2.相続人△△△△は次の遺産を取得する
○○銀行西宮支店  定期預金  口座番号

3.上のとおり分割された遺産のほか、将来何らかの遺産が発見されたときは、当該遺産については相続人全員により別途協議を行うものとする。

以上のとおり協議が真正に成立したことを証するため、この遺産分割協議書3通を作成して、署名押印し、各自1通ずつを保有する。

平成 年 月 日
相続人本籍 兵庫県○○○
住所 兵庫県○○○
相続人本籍 兵庫県○○○
住所 兵庫県○○○
長男
相続人本籍 兵庫県○○○
住所 兵庫県○○○
長女
遺産分割協議書作成後にあらたな相続財産が見つかったとき

遺産分割協議書作成後に新しく相続財産が見つかった場合にはあらかじめ誰が取得するかを決めておくと良いでしょう。

取決めがない場合は、新たにその財産について分割協議をし、その財産についての遺産分割協議書を作成し、かつ前に行った分割協議は有効であることを相続人全員で確認する旨の条項を入れておきます。

銀行預金の名義変更

銀行預金は、銀行が預金者の死亡を知ってからは、一部相続人が勝手に預金を引き出せないように、預金の引き出しができなくなります。
遺言があれば、その遺言で指定された人に支払われ、遺産分割協議が成立していれば、指定された相続人に支払われます。
預金を解約したり、名義変更するためには一般に下記のような書類が必要になりますが、遺言、分割協議の有無や金融機関によっても違ってきます。

誰がその預金を取得するかを記載した遺産分割協議書または相続人全員の承諾書
被相続人(亡くなった人)の生まれてから死亡するまでのつながった戸籍謄本や改正原戸籍等
相続人の戸籍謄本
銀行の所定の死亡届、
相続人全員の記名、捺印のある相続預金払戻請求書
相続人全員の記名、捺印のある相続預金領収書
相続人全員の印鑑証明書

銀行が預金者の死亡を知った場合には、その預金は、相続人に対して支払われることになります。遺言が存在すれば、その遺言で指定された人に支払われ、相続人間で遺産分割協議が成立していれば、指定された相続人に支払われます。遺言がなく、遺産分割協議も成立していないときに、相続人の一人が預金について法定相続分(自分の分についてだけ)の払戻しを請求した場合、銀行では、遺産分割前に相続預金を支払うときの手続は、遺言がないことを確認し、相続人全員の連署のある書類を要求の上、取り扱うのが原則です。

  銀行では遺言の有無、相続人の欠格・廃除、遺贈などを調査できない
  相続人のトラブルに銀行が巻き込まれることを回避したい
  銀行が被相続人の戸籍謄本で相続人全員の法定相続分を確認することも簡単ではないので、全員の連署のある書類を要求する
  家族名義の預金についても、被相続人のものかどうか争いが生じることがある

などがその理由と言われています。

相続財産の名義変更

不動産の名義変更手続き

法務局では誰でもその不動産が誰の物であるか、担保などがついているかどうかが記載されている登記簿を閲覧できるようになっています。相続が起こった場合、被相続人名義の不動産登記簿を相続人名義に変える手続きも必要になります。
なお、不動産の名義を変更しないでいてトラブルになることはよくあることですので、速やかに名義変更の手続きを行うことをお勧めいたします。
なお、司法書士に依頼すれば戸籍の収集から書類の作成、登記申請まで行います。
自分で行う場合は直接法務局へ相談しましょう。
以下で不動産の名義変更の手続きを解説していきます。

大まかな手続きの流れ
相続の流れ
手続きのすすめ方
1.登記に必要な書類の収集
登記に必要な書類はどのように遺産分割の協議が行われたかによって必要な書類が異なってきます。
具体的には以下のとおりになります。
法定相続人が一人の場合または法定相続分で相続をする場合
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・法定相続人の戸籍謄本
・法定相続人の住民票
・被相続人の除票または、戸籍の附票
・相続する不動産の固定資産税評価証明書
以上の書類は全て市区町村役場や市税事務所で取得することができます。
遺産分割協議で決めた割合で相続をする場合
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・法定相続人の戸籍謄本
・法定相続人の住民票
・被相続人の除票または、戸籍の附票
・相続する不動産の固定資産税評価証明書
・法定相続人の印鑑証明書
・遺産分割協議書
戸籍謄本、住民票、評価証明書、印鑑証明書については全て市町村役場や市税事務所等で取得することができます。
2.申請書の作成
登記の申請書の作成については状況によって複雑に変化するものなのでここでの解説は控えさせていただきます。
法務局に直接問い合わせてみるといいでしょう。
3.登記の申請
登記の申請書に集めた書類をクリップで止めて、相続する不動産を管轄する法務局に登記の申請をいたします。提出した書類に不備がなければ1週間くらいで登記が完了し、不動産の名義が変更されたことになります。
4.登記の費用について
登記を申請する際には税金(登録免許税)の納付が必要になります。
なお、そのときに必要になる税金(登録免許税)は固定資産税評価証明書に記載されている不動産の価格に1000分の4を乗じた価格となります。
なお、司法書士へ登記の依頼をした場合には必要書類の収集、登記申請書の作成、法務局への登記の申請まですべての手続きを司法書士が代理することになり、登録免許税以外に報酬が必要になります。
預貯金の名義変更手続き

被相続人の名義である預貯金は一部の相続人が預金を勝手に引き出すことを防止するために、被相続人の死亡を銀行などの金融機関が確認すると預金の支払いが 凍結をされます。凍結された預貯金の払い戻しを受けるための手続きは遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが異なります。
具体的な手続きは以下のとおりです。

通常は以下の書類を金融機関に提出することになります。
① 金融機関所定の払い戻し請求書
② 相続人全員の印鑑証明書
③ 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)
④ 各相続人の現在の戸籍謄本
⑤ 被相続人の預金通帳と届出印
⑥ 遺産分割協議であれば、遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

調停・審判に基づく場合

以下の書類を金融機関に提出することになります。
① 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(いずれも家庭裁判所で発行を受けることができます)
② 預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑証明書
③ 被相続人の預金通帳と届出印
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

遺言書に基づく場合

以下の書類を金融機関に提出することになります。
① 遺言書
② 被相続人の除籍謄本(最後の本籍の市区町村役場で取得できます。)
③ 遺言によって財産をもらう人の印鑑証明書
④ 被相続人の預金通帳と届出印
この他、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてみましょう。

株式の名義変更手続き

株式の名義変更は被相続人名義の株式が上場株式か非上場株式かによって手続きが異なります。

上場株式の名義変更の手続き

上場株式は証券取引所を介して取引が行われていますので、証券会社に対して手続をすることになります。

証券会社は顧客ごとに、それぞれ取引口座を開設していますので、取引口座の名義変更手続きを行います。
取引口座を相続する相続人は以下の書類を証券会社に提出して名義変更しましょう。
① 取引口座引き継ぎの念書(証券会社所定の用紙になります。)
② 相続人全員の同意書(証券会社所定の用紙になります。)
③ 相続人全員の印鑑証明書
④ 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)
⑤ 相続人の戸籍謄本

非上場株式の名義変更手続き

この場合取引市場がないので、それぞれ会社によって行う手続きが変わります。
発行した株式会社に直接問い合わせましょう。

生命保険金の請求

受取人に指定されている者が保険会社に対して直接請求することになります。
請求の際には以下の書類を保険会社に提出します。

① 保険金請求書(保険会社所定の用紙になります。)
② 保険証券
③ 死亡診断書
④ 被相続人の住民票及び戸籍謄本
⑤ 保険金受取人の印鑑証明書
⑥ 被相続人の死亡が災害や事故によるものである場合には、災害事故証明書または交通事故証明書

以上のほか、保険会社によって必要になってくる書類がある場合がありますので直接保険会社に問い合わせましょう。

その他

名義変更が必要な相続財産は、これまで解説してきた財産の他にも何点かあります。
その他の財産で主要なものをいくつか挙げておきます。

自動車

陸運局で名義変更の手続きを行います。細かい手続きに関しては陸運局に直接問い合わせましょう。

電話加入権

電話会社によって手続きが異なりますので、契約されている電話会社に直接問い合わせましょう。

ゴルフ会員権

会員の死亡とともに権利が消滅するゴルフ会員権もあり、その場合には相続することができません。そうでない場合は名義を変更する必要がでてきますが、ゴルフ場に直接問い合わせて、どのように手続きをしていけばいいのか聞いてみましょう。

遺言書について

自筆証書遺言

全ての文章や日付等を、自分の手で書く方法です。(代筆、ワープロなどで作成したものは無効) ただし、規定されている形式要件が整っていないとか、書いたのに発見されない、誰かに改ざんされてしまうといったリスクがあります。 遺言を残す最大の理由が、後々の紛争を防ぐことにあるのですから、作成には十分な注意が必要です。

自筆証書遺言の場合の注意点
全文が遺言者の自筆でなければいけません(代筆、ワープロなどで作成したものは無効)。
作成日付を正確に記すこと(「○年○月吉日」といった書き方は無効)。
遺言者が、自筆で戸籍どおりの署名、押印をする必要があります。
遺言書が2枚以上の場合はホチキスなどで綴り、署名押印した同じ印鑑で契印します。
必ず一人ずつ作成します(夫婦などの共同名義の遺言書は無効です)。
遺言者死亡後、家庭裁判所での検認手続が必要です。
秘密証書遺言

遺言者の生存中、その中味を誰からも知られることのないよう秘密にし、且つその存在を明確にしておくための遺言方式です。自筆証書遺言と違って代筆・ワープロを使ってもよいとされています。遺言書に本人の署名と押印をして封書し、公証人へ提出します。
ただし、遺言の内容を公証人が確認出来ないため、遺言書自体が無効になる場合もあり、また公証役場で保管もできません。なお自筆証書遺言同様に、家庭裁判所での検認手続が必要です。

公正証書遺言

遺言者が証人2人の立会いのもと、口述した内容を公証人が筆記し、遺言者と証人が承認した上で、全員が署名・押印して作成します。家庭裁判所での検認手続は必要ありません。
証人の立会と公証人の手数料が必要になるといった点はありますが、原本を公証役場に保存するため、遺言者の意思を完遂するにはおすすめの方法です。公正証書遺言は他の2つの遺言方式(自筆証書遺言・秘密証書遺言)に比べて安全性、確実性ははるかに高いといえます。

公正証書遺言の作成

遺言書の存在意義とは?

それは、残された家族の平穏な生活を守るためと言っても過言ではないでしょう。
財産の大小に関係なく、自身が何を思い、残された家族の生活をどう考えるか。遺言書はあなたの最後の言葉であり、失敗は許されない大切な仕事なのです。自分の残したもので家族が困るようになるほど、悲しいことはありません。

家族の生活を守るために書く遺言なのですから、盗難、紛失、誤記など様々な問題を考えると、公正証書で作成することをおすすめします。
公正証書遺言では、遺言書の内容を公証人が確認するため、無効になる可能性が限りなくゼロになります。また原本が公証役場に保管されるため、変造・偽造などを防止できます。

不動産がある場合は、当事務所でも公正証書遺言作成のお手伝いをすることができますので、ぜひご相談下さい。
財産の調査、原案作成、公証役場への同行等を行います。


公正証書遺言の作成手順
1 調査・資料収集
遺言作成に必要な調査・資料を収集します。
2 原案作成
お客様とのご相談の上、遺言書の原案を作成します。
3 原案提出
公証役場に行き、原案を公証人に提出します。
4 公正証書遺言作成
必要な書類を点検した上で、公証人が公正証書を作成します。
5 署名・押印
遺言書、証人2名が遺言内容を確認し、署名、押印します。
6 原本保管
原本を公証人が保管し、正本を遺言者が保管します。
7 遺言開示・執行
遺言者の死後は、遺言書の保管者が開封します。


※家庭裁判所の検認は必要ありません。
※手数料がかかります。公証人の手数料は「公証人手数料令」という法令で定められています。
※公正証書遺言を作成するには、証人2名が立ち会わなければなりません。
※遺言者本人であることを証明するために、3ヶ月以内に発行された「印鑑証明書」を用意します。